グルーバー、アップルのパテント係争を語る

かれこれ10年ほど前、私がまだ30代前半の頃、法律の専門家の友人に「司法試験って今からチャレンジできるかのぉ?」と尋ねたところ「いけるいける、今はパテントが狙い目やでー」とアドバイスされたことを思い出します。当然そんな思いつきの野望は3日も経たずに忘れ去りましたが、パテントって案件が増えて来ているんだろなーと漠然としたイメージを抱いたのを思い出します。

例によって私がまったく知識のない分野についてアップルが看過できない問題を立ち上げてくれたので、無理やり考えることになってしまいました(前置き長すぎ)。ご存知のことと思いますが、アップルがHTCを相手どり、Nexus Oneがアップルの20の特許を侵害しているとして係争を起こしました。相手がNexus One、これは穏やかでないなと気になり始め、でもどの記事を読んでも事の本質がイマイチわからんかったのですが、John Gruberの記事がかなりスッキリさせてくれました。パテントについての私のこれまでの知識不足を、今回の問題が最低限わかる程度には補ってくれたうえで、何が問題なのかを示してくれていて、助かりました。

グルーバーの結論としては、今回の特許係争については、アップルはあんまり深入りしない方がいい、ということ。グルーバーによるとその理由はアメリカにおけるソフトウェア技術に対する特許認定の現状のまずさにあります。

記事の冒頭、Tim Brayのソフトウェアの特許認定に関するエッセイを引用しています。ブレイはここで(アマゾンのものと思いますが)いわゆる「1クリック」と(初期の)PGPのどちらが特許を与えるにふさわしいかを比較し、もちろんPGPがそうであるとして特許が認定されるべき具体的なソフトウェア技術のイメージを示した上で、

I also think that to get a patent, an invention should include innovation both in conception and implementation.(ある発明が特許を得るためには、その発明が発想と実装の両面で革新的であるべきだと私は思う)

という論旨を示しています。グルーバーはこのブレイの論旨に完全に同意するとしているのですが、いくつか問題があって、そのうち特にUSTPO(米国特許商標庁)のソフトウェアの特許認定における機能不全はひどい、と苦言を呈しています。つまりそもそも特許庁の人間がソフトに特許認定することの意味を実際には理解していない、何も新しくはない技術にたいして嬉々として特許を与える、で、そこに絡んでいるのが特許ビジネスのからくりであり、結果としてこのシステムは実質的に企業の法的実務を扱う専門家に寄与している、そしてこうした状況はなかなか変えられるものではない、と。

この流れで今回のアップルが起こした係争を見てみると、もちろんジョブズの怒りはわかる、でも、そもそもこうした特許に関することでアップルが問題を長引かせることによるメリットは少ない、とグルーバーは言います。加えてソフトウェアへの特許付与に関する上記のような問題があることに加えて、次のような意見を示します。

To me, “user interface” patents are hand-in-hand with “business method patents” as examples of things which, no matter how innovative or original, ought not be patentable. They’re idea patents.(私にしてみれば、UIの特許は[1クリックのような]「ビジネスモデル特許」と同じ括りにあるもので、どれだけ革新的でオリジナルなものであっても、特許性のあるものではない)

私は前回のエントリでiPhoneのUIの素晴らしさを記事にしましたが、グルーバーのこの考え方については、私自身はまだ十分理解出来ていないようです。ただ、この理屈の根拠となっている “You can’t (or at least shouldn’t) be able to patent mathematics, and there are good arguments that programming is a branch of mathematics.”(数学に特許を与えることはできない(というか少なくとも与えるべきではない)し、プログラミングは数学の一分野であるという考え方にも十分な根拠はある)という示唆については、まあこれも深くわわからないですが、わかる気はします。

グルーバーは、アップルの特許技術が確かに発想においても実装においても革新的でありオリジナルであることを認めていますし、そうした技術から得られる利益を期待したいというジョブズの気持ちもわかる、なによりそうした技術は世界をよくするんだから、と完全に同意したうえで、それでも、全てを望むことはできないのではないか、もしそれをしてしまったら・・・、という懸念を示します。つまり、Paul Graham が”Apple is inching ever closer to evil, and I worry that there’s no one within the company who can stand up to Jobs and tell him so.”(アップルはかつてなく「イーヴィル」に近づいていて、アップルの社員の誰もがジョブズにそのことを提言することができない)と述べていることに基本的に同意しつつ、アップルが”evil”な存在になってしまうことを心配しています。

いやぁ、アップルにまつわる様々な事どもを通じて、いろいろと勉強させていただいております。

それと、私に「パテントをやれ」と言ってくれた10年前の友人の言葉が今になってリアルに理解できたのが、うれしかったです。Wくん、元気にしてるかなぁ。

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