Appleの新たな目標はコンピュータの家電化

Apple TV(リンクはMarrさんの最新レポートです)など、家庭での使用を前提とした製品との統合的な展開がいよいよ視野に入ってきていますが、先日発表されたMacBook Air、新しいOSのLion、MacのApp Storeなどの新機軸は「コンピュータ」そのものの家電化の始まりを示す、とのこと。

米TIME誌が “Apple’s New Goal: The Computer as Appliance” が、コンピュータから見たテクノロジーの家電化、という主旨の記事を書いています。一見、先日のイベントのまとめかな、という感じもしますし、「何を今さら」という思いを持ちながら読んでいると、そこはTIME誌、最後に厚みをつけてきて、なるほど、と思える感じでした。消費者のくだりあたりは、ロジックは違いますが、私が先日書いた記事と被っていて、かなり共感しました。以下、記事の訳です。

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アップルは、自社が発売している一連のMac製品は「できるやつ(Just work.)」だと言う。もちろんこれは相対的な表現だ。確かにMacは数あるコンピュータのなかでもソフトウェアとハードウェアとサービスが最も洗練された形でパッケージされたものである。Windows機を作っている複数の大メーカーが到達できない信頼性もある。ただ最近、iPhone とiPadによってシームレスでシンプルなコンピューティングモデルが提示され、これらに比べればMacは、新規ユーザーにとってはうまく使いこなせない部分やすぐには理解できないところがいろいろとある、複雑で全く必要のない機能のついた単なるパソコンになってしまう。

これはひとつの見方だ。そして、クパティーノのアップル本社で行われた先週の記者会見からわかるのは、そういった見方に対する答えとなる方向性をアップルが示した、ということだ。”M.C.”のスティーブ・ジョブズはその講演のタイトルを「マックに回帰せよ」として、iPhoneやiPadから得たアイデアをMacに取り入れたと言った。ジョブズや他の重役たちは新しいハード、ソフト、サービスを説明し、27歳になろうとするMacのプラットフォームが過去の「パソコン」のように小難しいものではなく、もっと扱いやすいデジタル家電のようなものだという印象を与えようとした。

この大革命の最初のヒントは、新しいMacBook Airだ。2008年1月に発表された初代のAirよりさらに洗練され、スペックが強化され、カミソリのような薄さにデザインへの妥協は微塵も見られない。価格は比較にならないほど安い999ドルから。アップルは「次世代のMacBookを定義した」と言う。遠からず、アップルのラップトップは全てAirのようになるだろう、と、消費者に心構えをさせた。多機能でパフォーマンス重視のMacBook ProよりはむしろAirがMacノートの未来である、と。

他のアップル製品にも同様のことが言えるが、とりわけMacにとって重要なのは、そのアルミ筐体に何の機能を残し、それを詰め込むか、ということだ。初代のMacBook AirにはDVDドライブがなかった。今回はさらに最後の砦とも言うべきハードディスクをやめてフラッシュメモリを採用した(それでも無音に近い冷却ファンは残っているが)。

フラッシュのマイナス面は、同じ価格帯のものを買うなら容量が小さくなることだ。999ドルのAirは64Gしかなく、これは同価格帯の廉価版MacBookの4分の1である。しかしフラッシュは、円盤が回転するハードドライブに比べると、飛躍的なグレードアップだ。動きは早く、空間の確保に役立ち、バッテリーの持ちも長くなる。持ち運んでもデータが壊れる可能性が格段に少ない。

私は二つの新しいAirを持ち運んでいる。ひとつは重さ2.3ポンド、薄型高解像度11.6インチワイドスクリーンモデル。完全に私の夢のマシンというわけではない。SDカードスロットがない。5時間バッテリーは許容範囲だがずば抜けてはいない。もうひとつは大きいAir。1299ドルからで13.3インチディスプレイを誇る。重さは2.9ポンド。どちらかというと私はこちらだ。SDカードも使えてバッテリーは7時間。

しかし、やはり11.6インチモデルは、iPadのようなミニマル思想に近く、ほとんどのポータブルコンピュータができなかったような、どこにでも持っていける携帯性を実現している。ある会議でこれを使っている私を見た友人は、2枚の折りたたまれた金属をタイプしているように見えた、と言った。その後、私が信頼する4.5ポンドのMacBook Proに戻ったときには、誰かがいじわるにも折りたたまれた金属を船の錨にすり替えたかのような感覚に見舞われた。

新しいMacBook Airはこれまでで最も家電製品に近い製品だ。しかしこれまでのモデルと同じOS Xを使っている。そして先週のイベントでは、2011年の夏にお目見えする後継者のLionが紹介された。これまでにわかっている限りでは、Lionは、今までのインターフェースが好きな人向けにはこれが維持される。しかし新しい選択肢として、Macがキーボードがついた大きなiPadのように見えるようなインターフェースが採用されている。新しいフルスクリーンモードにはOS Xのメニューバーがなく、Launchpadビューではアイコンやフォルダがグリッド上に整頓されて並べられる。まさにiPadやiPhoneのようにである。タッチジェスチャも新しい。(他メーカーはタッチディスプレイのラップトップを作っているが、垂直のディスプレイを手で操作するのは人間工学的に完全にアウトだ、とするのがアップルのスタンスだ)

そして、そう、まちがいなく普及するだろうが同時に論争も巻き起こすであろう新しいサービスがある。60日以内にはOS X上でApp Storeが展開されるのだ。iPadやiPhoneのApp Storeと同じく、OS Xのそれによりソフトウェアのダウンロードとインストールが簡単になり、複数のMacのアプリのアップデートも1クリックで行える。どのアプリケーションを採用するかをアップルは決めることになるが、OS Xのインターフェースを変えてしまうものや、「悪意のある」ものは排除されるだろう。そして配信料として3割を徴収されるだろう。

iPhoneやiPadと違い、Macはユーザーがインストールしたプログラムはどんなものでも動かすことができる。そうであったとしても、アップルが正式に認めたアプリがMacに導入されるという事実により、予想することが難しいようなインパクトがMacのエコシステムにはもたらされるだろう。App Storeというシステムがもたらす利益は、これまでそれ相応にかかっていたソフトウェアのコストを99セントかそれ以下にまで下げることに貢献するのか。Adobe、Intuit、Microsoftはこれに乗るのか。デベロパーはクパティーノの怒りを避けるために自己検閲するのか。もうすぐこれらが明らかになる。

アップルは他に類を見ないほど、不確実性や批判や憶測に晒されながらも、独自のビジョンを追求する会社だ。アップルが動けば、皆が動く。しかし究極的には、アップルはその上位に位置する存在に対して答えている。つまり、製品を買う消費者に対して答えているのだ。Macであれ、ソフトであれ、サービスであれ、それが「できるやつ」たちならば、消費者は買うのだ。そして消費者が「これはいいね」と言うとき、アップルのコンピュータ、つまり、パーソナルコンピューターそのものの家電化の時代が始まる、と言って間違いないのである。

(了)

10 Responses to Appleの新たな目標はコンピュータの家電化

  1. isaac より:

    毎度です。
    「できるやつ(Just work.)」は良い訳ですね~ 以前からこの訳に悩んでいて、「使えるやつ」「すぐ動く」「すぐ使える」「しちめんどくさくない」など、色々考えたのですが、しっくり来ませんでした。今後は「できるやつ」を使わせていただきます。

    「家電化」、いいですね。是非冷蔵庫やトースターの様に、説明書がいらないものになって欲しいですね。 いまでもMac & iOS機器はマニュアルなくてもほぼ使えますが、(だから, 「Just work.」!!)更に使いやすいものにしていって欲しいです。他社は絶望的ですから。

    全くの余談ですが、MBAの日本語マニュアルには、「変数」という単語が頻出します。 英語版ではMacBook Airになっていますので、使い回しが出来るように、「変数」としておいたものが、そのまま出てしまったのでしょうね。 Appleのマニュアルには珍しい間違いなので、大事に取っときます。

    また、日本語版マニュアルのpdfで「MacBook Air」を検索すると、一件しかヒットしません。そこかしこに見えるのに、なんでかなと思って、その部分をコピペしてみたら、
    「*+,/””0&12%」
    とかの意味のない文字列になりました。(他にも見えているのはDVDだがコピペすると「+,+」とか、結構たくさんあります。)
    因みに、英語版では「MacBook Air」は398件、中国語版だと231件ヒットしますので、日本語版だけちょっとやっつけ仕事だったみたいですね。 マニュアルなのに、単語で検索できなくて不便です。Appleらしくな~い。

    失礼しました。

    • zacky1016 より:

      どうもです。
      私も過去の訳をいろいろと眺めていて、それぞれにいい訳なのですが、私がMacを使っていて感じた印象でもって「できるやつ」にしました。だって「できるやつ」なので(笑)。
      日本語マニュアルは確かに、ウェブでもおかしなことになっていた記憶があるので、きちんと校正が入っていなかったりするんでしょうね。そういうやっつけ仕事は、なんというか、凹みますよね。まあ、すべての文書にすべからく目を通すのは大変だというのはわかるんですが。そう思うと私も人のことは言えません(笑)。
      でも、日本における、アップル製品の印象に大きく関わることですから、ここは日本のスタッフのみなさんに頑張っていただきたところですね。

  2. まさがず より:

    「信頼できるアプリケーション以外をインストールしたMacは保証対象外です。Appleが認めたアプリケーション以外をインストールした後、ハードウェアおよび周辺機器に不具合が出た場合、Appleはいかなる安全性も保証しません。」

    こうならない事を祈ります。

    • zacky1016 より:

      まさがずさん、コメントありがとうございます。
      iPadやiPhoneは事実上そうなっていますが、Macも、ということですね。
      個人的にはそれはないのではないかと思っています。いま、その根拠を、と言われるとちょっと答えに窮しますが、例えば様々な機能拡張はMacのある意味存在理由のような印象を私などは持っていて、個々のアプリケーションのそれを含めると、かなりの数になります。それと、消費者から見れば、よくわからない鬱陶しいプログラムがプリインストールされているマシンよりも、本当に必要なアプリケーションが適切に選べる環境さえ整っていれば、問題がない場合が多いと思われます。
      問題は、おっしゃるような文言をアップルが言ってしまうかどうか、ということになると思いますが。やはり、ないんじゃないのかなあ。
      そういうチャンネルも、一定の消費者層には用意する、ということにとどまるのでは、というのが私の予測であり、希望です。

  3. isaac より:

    今日はiPhone 4が届きました。 今週は忙しい…

    iPhone 4とMBAを両方セットアップしてよく分かったのですが、iOSデバイスは母艦につなげば即完了です。 Macでもクラウドが母艦になれば、ずっと楽になると思います。 従って、私はクラウド+Mac版App Storeに期待大です。
    Appleも他のチャンネルではAppを一切販売させないと言うこともないでしょうしね。

    • zacky1016 より:

      おめでたつづきですね(笑)。
      そうですね。残るはクラウドとの連携。「シームレス」と言えるようなサービスを期待したいものです。MacのApp Store、どんな仕様になるのか、かなり興味深いですね。わくわくします。

      • isaac より:

        えー、娘にもMBA買ってやる事になりました。財務大臣のご指示です。
        という事で、間もなく我が家は、一人一台MBA!!…という事になるかも?

      • zacky1016 より:

        財務大臣様は神様です(笑)。いや「ご指示」が出ましたか。我が家ではこのところの散財のおかげで、さすがにそれは無理だと思われ(笑)。11ですか?

  4. isaac より:

    おやばかちゃんりんは、「予算」を伝えるのを忘れましたorz 「11でも13でもいいから、メモリーは4GBねー」、と言ってしまったので、おそらくやつは13インチ、256MB、4GB(ひょっとしたら2.13GHz?)をオーダーすると思います。 MBPまたお下がりちょうだいねー

    • zacky1016 より:

      うぷ。フルスペックですね。
      こうしてアップル製品の家族内循環が始まるわけですね。うちも同じですが。

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