現実を歪める、っていうのはトロープでしょう。

“Reality Distortion Field”については本ブログでも以前触れましたが、ことあるごとに誰かがこれについて言及します。

今回はRIMのCEO。Cult of Macが “RIM CEO: ‘Distorted Reality’ Puts Apple Ahead of Us” という記事で伝えているのは、17日までサンフランシスコ行われていたWeb Summit 2.oでRIMの共同CEOであるJim Balsillie氏がスティーブ・ジョブズを批判した件です。iPhoneがBlackberryを抜いた(おそらく出荷台数に関するものだと思いますが)という調査を受けバルシリー氏が戦闘モードに入ったとして、彼が「そのリードは “ジョブズの歪んだ心のなか”(引用符筆者)だけのものだ」と言ったと伝えられています。

記事で取り上げられているバルシリー氏の発言は次のようなところです。

“For those of us who live outside of Apple’s distortion field, we know that 7” tablets will actually be a big portion of the market and we know that Adobe Flash support actually matters to customers who want a real web experience”

(アップルの現実歪曲空間の外にいるわれわれにとっては、7インチのタブレットがマーケットでは最大であり、本当のウェブを経験したいと思うユーザーにとってはFlashをサポートしているかどうかが問題であるということも知っている)

“You don’t need to go through some kind of software development kit. That’s the core part of our message. You can use your existing development environment.”

(ソフトウェアを制作するために開発キットを使う必要がない。それがわれわれのメッセージの重要な部分だ。現有の開発環境を利用出来る)

“There’s still a role for apps, but can you use your existing content? Can you use your existing web assets? Do you need a set of proprietary tools to bring existing assets on to a device, or can you use known tools that you use for creating websites?”

(アプリの有用性は認める。しかし、現有のコンテンツを利用出来るか?現有のウェブ環境を利用出来るか?現有の環境をデバイスに持ち込むために独占的なツールが必要か?ウェブサイトをつくるために現有のツールを使えるか?)

と、Web Summitですから、その主旨に合った発言をしております。

バルシリー氏が提示したいのは、アップルの空間とそれ以外のウェブ空間は別のもので、アップルのそれは「歪曲」されたものである、という構図です。

氏は開発者に対して語りかけているため、開発者ではない私にはどちらが正しいかは(万年素人であることは明言しておりますが)わかりません。とはいえ、業界の指向とユーザーの指向のバランスが取れた方向に進んでいくのが当然の成り行きであるのではないか、という推定はしております。

ただ2点、どうなんだろう、というところが。

ひとつは、「本当のウェブエクスペリエンス」は、やはりFlashを用いてしかもたらされないのか、ということ。おそらくFlashがなくてもウェブを(ユーザーとして)問題なく利用できる人の数のほうが、世の中には圧倒的に多いと思われます。ただFlashのドミナントの問題があることでしょうから、このあたりの力関係は、私には根本的にはわかりかねるところです。

もうひとつは、「現実歪曲空間」に関すること。

現実は「変わっていく」ものです。それは、いろんな要因で起こることです。モバイルに関して言うならば、いちモバイルユーザーとして長年いろいろと考えてきた私などにとっては、モバイルデバイスで最も重要な要素がバッテリの持ちであり、これを満足の良く形で提供できているデバイスがほとんどなかった。それを、iPad、そして新しいMacBook Airが見事に実現してしまった。おそらくその重要な理由のひとつが、Flashがない(MBAではデフォルトではインストールされていない)ことです。

もちろん、本当のウェブエクスペリエンス、という指向性と、実用的なモバイル、という指向性は、現在では並行して語ることが難しいものだとは思うのですが、少なくとも、iPhoneやBlackberry、あるいはタブレットデバイスというモバイルにおいては、バッテリの性能を無視しては、ユーザーの支持は受けられないのではないかな、と思うのです。

ユーザーは、ほしいと思う「現実」を選ぶ、と思います。

だいたい「現実歪曲」という言葉を、実際の現実を歪めてる、みたいな説明をしているときに使うというのは、なんだかいただけない気がします。未来を作るために、今を変革する。そのために人を動かすための類まれなるジョブズの才能を、そういう比喩を用いて説明しているわけですから、そこに破綻があるような素振りで本当の現実のほうが違う(「アップルの現実歪曲空間の外にいるわれわれにとって」のところです)みたいに言うのは、あまりカッコヨクないです。

2 Responses to 現実を歪める、っていうのはトロープでしょう。

  1. isaac より:

    “trope” 恥ずかしながら初見です。 英語(中国語も)は基本black & whiteだと思っていましたので、今後は「言葉のあやですよ、察してくださいな」てな時に使えそうです。感謝。

    欧米のCEOは、株主の手前、断定的・挑戦的な発言をしないといけないそうな。 iPadは飛ぶように売れていて、一方、RIMの競合機はまだ発売前ですから、その時点で何をいっても「xxの遠吠え」でしかないんですけどね。 Galaxy Tabも1ヶ月で60万台売れたというニュースがある一方で、英国では定価の200ポンド引きで売られているという話も出てきてますので、ひょっとしたら7インチはほんとにD.O.Aかも。

    Jobsの現実歪曲空間は、「突拍子もなく聞こえるけど、Jobsが言うと、なんか信じちゃうんだよね~」とある種尊敬と期待の入り交じった批判なので、まともに反論したら子供じみて見えるだけでしょうに。 (おそらく、MCはそれが狙いで質問振ったはず。)

    • zacky1016 より:

      私的に結構標準的に使ってしまっていたので、思わず。標準的じゃないですよね(汗)
      挑発には、乗らない(笑)ようにはしているんですが、ときどき気になってしまうことがあったりします。
      今フィラデルフィアですが、日本と同様多くの人がデジタル機器を使っています。わりと多様です。日本は大方がケータイですが、スマフォの類を使っている人の数が非常に多い。iPadも、日本よりは見かけるきがします。とあるフードコートで、マネージャーらしき人がiPadでせっせとメールを打っていたのが印象的だったり。
      香港の市井デバイス事情って、どんな感じなんでしょう。

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