企業国家アメリカのロックスター、スティーブ・ジョブズ。

MarketWatchの “2010 CEO AWARDS” 発表にともない、“The rock star of Corporate America” という記事でRuss BrittがCEO of the Decade に選ばれたアップルCEO スティーブ・ジョブズについての総評を行っています。冒頭のまとめは次のようなものです。

Steve Jobs is known as both mercurial and visionary, part rock-star CEO and part master salesman, a meticulous micromanager who can drive his employees to distraction — and one of the most important figures in American industry in the past half-century.(機知縦横、明確なヴィジョン、ロック・スターなCEO、優れたセールスマン、社員をイライラさせるほど細部にまで口をはさむ管理者。これらがスティーブ・ジョブズの人となりとして知られているところだ。そして、彼はまた、過去半世紀におけるアメリカの産業界で最も重要な人物のひとりである)

「ほとんどひとりの手でiPodとiTunesで会社を窮地から救い、その後タッチスクリーンのiPhoneでポータブルデバイスの革命を起こし、iPadでPC後の時代の案内役を買ってでている」と、アップルとジョブズのここ10年を端的に説明し、以降特に目新しい内容の記述はありませんが、過去10年のアメリカで最も優れた経営者であることを証明するために、ジョブズがいかに稀有な経営者であったかという点が強調されているように思われます。

テック業界のシンクタンクEndpoint TechnologiesのRoger Kayは “It’s on par with Thomas Edison and Alexander Graham Bell in terms of its total impact”(全体のインパクトという点ではトーマス・エジソン、グラハム・ベルに匹敵する)とジョブズの業績を評価し、記事の筆者のブリット自身はジョブズをウォルト・ディズニーになぞらえています。同業他社が業績不振のときにアップル製品はその付加価値によりかえって業績を上げたこと、ピクサーを立ち上げてディズニーの最大株主になったこと、アップルストアの成功など、ジョブズの賞賛すべき業績が挙げられます。

もちろん代償がないわけではない。「ジキルとハイド」としてのジョブズ(Roger Kay)、社員を無作為に解雇してまわったジョブズの過去の逸話(そしてそれがジョブズのアップル追放へとつながる)についての言及。そして強いられる徹底した秘密主義。業界アナリストRob Enderleはジョブズを「子どもの面倒を見てもらいたいと思えるような人物ではない」とします。しかし同時に「経営者としては秀逸だ」とも言う。

The Second Coming of Steve Jobsの著者Alan Deutschmanは “Everyone focuses on his incredible successes. Part of the equation is he’s also had plenty of flops in his career. Part of being so innovative is you have to actually be risk taking. You can’t give lip service to it, like everyone else does”(ジョブズの驚くべき成功譚にばかり焦点が当てられるが、実のところ成功の裏には数多くの失敗があるのも事実。リスクを取らなければあれだけの革新者になるにはなれない。口先だけのお世辞だけでは済まない話だ)として、そうした「代償」に意味付けをしているようにも見えます。

2001年にiTunesが発表され、2003年にはWindows機に開放、そしてこれまでに2億7千9百万台のiPodを売り、トータルで477億ドルの利益をiPodとiTunesからあげているアップル。iCon: Steve Jobsの著者Jeffrey YoungはiPodとiTunesがいかにアップルの運命を決定づけたかについて、iPodとiTunesがジョブズに “religion” を与えた、と表現しています。

記事はその後、iPhoneでのタッチスクリーンの採用、PC後の時代を見越したiPadの導入、MacBookの売上の好調など、最近のアップルの動向をなぞっていきます。

MarketWatchという媒体の性質上、記事の最後は “Red Flags”(危険信号)というセクションでしめくくっていて、アップルの株主や消費者にとっての最大の関心事である、ジョブズ自身の健康問題、そして、アップルの後継者の問題について、ジョブズが何ら回答も、示唆すらもしていない、ということを問題視しています。

ただ裏をかえせば、これは自らの生き方をも、ある種商品価値化するような佇まいの表れなのかな、と考えられます。アップルの製品と同じく、少し先の未来を予想させつつ、でも実際にそれが起こるまで誰にも答えはわからない。観る者をはらはら、わくわくさせるような、まさに「ロック・スター」な佇まいこそが、アップルという会社が、そしてスティーブ・ジョブズという人物が存在していることの意義なんだろうな、と思ったりするのです。

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