リベラル・アーツとアメリカと日本

カタめの思索になってしまいました。以降関心がおありの方だけお読みください。

テクノロジーとリベラル・アーツの交差点。

iPad発表イベントでジョブズが示した、アップルがこだわる「べき」場所です。

前回、おでこさんから頂いたコメントの返事の中で、iPadそのものよりも(というと語弊があるけど)私的にインパクトを感じたのがこの「リベラル・アーツ」というコトバでした、という旨のことを書きました。

この「リベラル・アーツ」に反応していらっしゃる方はやはり多いようで、東浩紀氏は氏出身の東大教養部の英語名称変更などと絡めながらツイッターでこのことについて次のようについてつぶやいていました。

水を差すようだが、アメリカでリベラルアーツの思想が生きてるのはいいとして、それを見て「日本でも教養を根付かせないとダメだ!」と反応するのは愚か。すでに日本は、教養を根付かせようとして、失敗した段階にある。「べき」論では事態は動かないのだ。

大学教養部の解体は1991年の文部省によるいわゆる「大学設置基準の大綱化」に端を発します。よく誤解されるところではあるんですが、この大綱化自体は大学に教養部の解体を強制するものではありませんでした。学部教育のカリキュラム編成を各大学の裁量にまかせる、というのがこの大綱化の本質でした。ただ、結果として国立大学の多くでは教養部が解体されることになりました。

価値が多様化している昨今、かつて日本人が抱いた教養のイメージはもはや跡形もありません。東氏の「『べき』論では事態は動かないのだ」という意見ももちろん正論です。

でも、「べき」論、ホントにいらないんでしょうか。

「正しい」「べき」論、を説く人も必要なんじゃないか、と思うことが、最近しばしばあります。

「正しい」「べき」論なんていうと、そりゃ怒る人がいる、っていうのはわかってます。

でも、「論」って「べき」は含まないのかな。

強引に論を進めようとするひとに、「べき論はだめだよ」と躓きを与えようとする物言いはよくありますが、「べき」を言ってはいけない、というのなら、人文系の議論の多くは、論の端緒にすら辿り着けないような気がします。ひとりよがりのべき論はだめですが、多くの人が共感する「論」はひとつの「べき」の方向性を示す権利をもつものではないか、と思ったりします。その見極めももちろん困難ですが。

リベラル・アーツって「自由学芸」と訳せる。と同時に元来は、奴隷ではない、自由人のための技能、といった意味であったかと思われます。自由人であるには、何かしらの知識や技能が必要であったわけです。

「べき」から逃れることが理想的に映った時代から30年を経て、今、日本に生きているひとのどれほどが、自分を「自由人」として自覚できているだろうか、という思いに、ジョブズのプレゼンの後、深く引きずり込まれました。

私自身、何も日本で「教養」を復活させようとか、そういう思いがあるわけではありません。

ただ、2002年、文部科学省は、新しい時代における教養教育のあり方について、とする答申を出し、教養の再考を、高等教育に携わるものに促しています。

お役所の出すお触れにいちいちかまうな、という向きもあるかもしれません。ただ、こうした答申が時代の雰囲気を反映していることも事実で、こうした流れに一瞥もくれない、ということにも問題があるのでは、と思ったりします。

東氏の思想については、一市井の人間としては、全く共感するところも多いんですが、「教養」を根付かせることに失敗した段階にある、として、「教養」を考えない、ということにしてはいけないのではないかな、と、思ったりもします。

なら「教養」って何なの?と問われても、今は答えは持ち合わせていません。この時点で私の負けですけど(笑)

でも、せっかくジョブズが示した道です。

これから何年かかけて考えてみます。

あ、Marrさん、いつも取り上げてくださってありがとうございます。私のような斜め目線ではない、アップルへの純粋な愛情から紡ぎだされるMarrさんのiPadレビュー、ぜひご覧下さい。

iPad、iPad、iPad(反芻)

何度か頭で反芻しました。

日本語の「アイポッド」と「アイパッド」の音の違いと、英語の iPod と iPad の音の違い。

日本語の音の違いで想像するより、英語の音の違いのインパクトって、あるのかな、と思いました。「アイピャーッド」と書くと言い過ぎですけど、広がる感じはあるんでしょうか。

今回はじめて、リアルタイムでジョブズの声を聞きながらGizmodeとEngadgetのライブカバレッジを合わせてフォローしておりました。声を聞いていたのはUSTREAM。当ブログでおなじみのLeo LaporteがホストのMacBreak Weeklyが今回のイベントの生中継をしておりました。(下の写真はフィル)

本題。発表されたスペックの概要。

10インチIPS(日立?)、1.5ポンド(680グラム:MacBook Airの半分)、10時間バッテリ、Wi-Fi + 3G、ソフトウェアキーボード。

なるほど。巨大化したiPhoneというのは、当たっていましたね。

eReaderは iBooks。iWorkが動く。

それとOne More Thing。

キーボードとケースがつきます。(画像はGizmodeからお借りしました)

(追記:キーボードやケースなどはアクセサリ扱いで付属はしません)

値段はこちら。

Wi-Fiのみの廉価版は5万円が目安ですね。

カメラがついていないようです。

・・・

はてさて。ものすごく驚くことは特になかったです。当たり前です。あれこれ考えすぎてたものですから。

で、最後のコメントに、なるほど、と思いました。

“We’ve always tried to be at the intersection of technology and liberal arts — we want to make the best tech, but have them be intuitive. It’s the combination of these two things that have let us make the iPad.” (いつもテクノロジーとリベラルアーツが交わるところにこだわってきた。技術的に最高のものをつくりたい。でもそれは直感的でなければならない。これらの組み合わせがiPadをわれわれにつくらせたんだ)

“liberal arts”は、「教養」とでもいうんでしょうか。広い視野を持つための学問。自由民(奴隷でないもの)が学ぶ学問。

やっぱりすごいな。

2年前、MacBook Airで先鋭的な、あまりに先鋭的なイメージで私たちを釘付けにしたアップル。2年後、返す刀で、技術的な意味で期待しすぎた私たちに、大事なのはバランスだ、と説く。

iBooksはやはりiPadの目玉でしょうし、「読書」がキーコンセプトになるマシンに「教養」というコトバをぶつけてきた。iPadという名前も、おしゃれすぎない、先鋭的すぎない、ある意味バランスは取れているけど、最初に印象を書いた通り、すでにあるiPodとははっきりと違いが出ている。「ノートパッド」の代替物だとすれば、iBooksとあわせて教育分野での使用ケースを相当意識しているはずです。

おまけに、私が一番心配していたキーボード問題も、

ソフトウェアレベルでも

ハードウェアレベルでも

なんときっちり解決されている。

なんだか、すごく和んでしまいました(笑)。

アップル信者としてはじめての大イベント。

安らぎをありがとう。ジョブズさん。

Wi-Fiだけモデルなら日本でも早くでるのかな?

いまから2時間だけ眠ります。

Mr.ジョブズ。これからもよろしくね。

IMG_0321IMG_0323Fortune誌がアップルのスティーブ・ジョブズ氏をこの10年で最良のビジネスマン 、”CEO of the Decade” に選びました。ティーンが選ぶかっこいビジネスリーダー,みたいなのにも選ばれてましたよね。

なんか,感慨深いものがあります。

つい先日、ずいぶん昔に定期購読していたTIME誌が数十冊まとまって出てきました。その中に携帯で電話をしているスティーブ・ジョブズの写真が表紙になっているものがありました。1997年8月18日号(アジア版)です。 “Bill, thank you. The world’s a better place” という表紙見出しで、ジョブズの電話の相手は当然ビル・ゲイツ。ジョブズがアップルに復帰し、様々な思惑のなか、マイクロソフトとの提携を推し進めたころの写真です。

ほかにも「うわっ,なっっつかしぃー」と思わず叫んでしまう写真がいくつかあって,この頃から黒のタートルにニューバランスだったのね,あ,一時期ナイキに変えたとかいうのもあったなー,などと思い出したりしていました。そのなかに’91年に撮影されたジョブズとビル・ゲイツのツーショット写真がありました。この写真が添えられた記事の小見出しには “Will Bill Gates’ bailout save Apple—or just strengthen Microsoft’s hand in the Web wars?” とあります。12年経った現在の時点では,どういう結果をもたらしたかは明らかです。

私がマックを使い始めたのもちょうどこの頃です。ジョブズが戻ってくる直前,アメリオの頃のマックです。とにかく頻繁にフリーズし、仕事にも少なからずの影響が出ていました。愛着はありつつも,Windowsも使い始めて,メインはWinになりました。以後,仕事の効率性との兼ね合いで,愛機模索の果てしない葛藤が始まるのです。現在,すっかりマカーな私ですが,ビル・ゲイツをこき下ろす気にならないのは,上のような事情があるからです(バルマーはどっちにしろ「生理的に」うけつけません)。だから,ビルに(バルマーにではありません)恩義を感じて(笑),7をマカーな視点からいつになるかわかりませんが評価しようと思ってます。

そうか,’97年頃のマックって,Vistaを積んだWindowsに近いものがあったということなのか。うーん。やっぱりジョブズがいないと不安だなー,という思いがますます強くなります。長生きしてください,と願うとともに,魅力的な後継者が出てくることを切に望みます。

モバイルとマック

しかしあれです。まだマックです。

10年以上前からMac使ってましたが,別にApple信者というわけではなかったんです。たしかに初めてのパソコンはPowerMac 7600/200 ではありました(それまではワープロ。あとBASICを勉強しようと思って挫折しゲーム専用機となった「ポケコン」PC1350)。でもしょっちゅうフリーズするOSに,寛容に対峙しつつもWindowsと併用し始め,その後メインはWindowsに。iBook G3をサブで使いつつもメインマシンにする気持ちにはなりませんでした。確かにJaguarからPantherに上げたときには,OSXの感触は良くなった印象はありました。それでも2005年にThinkPad X40をモバイルのメインで使い始めてからは,しばらくマックは関心の外でした。このころからモバイル熱が出始めて様々なモバイルWin機を渡り歩きました。そうこうしていると2008年にAir登場です。Leopardがいい,というのは聞いてました。Vistaへの移行に不満があったクチでしたので,Macの軽量ノートを待ちかねていたこともあって,ひとつ試しにと,4月ごろに値が落ち着いたのを見計らって購入。

やられました。

13インチディスプレイとフルサイズのキーボードがモバイルできる。結構気軽に。完全にはまりました。私的に。

重量,キーボード/ディスプレイの大きさ,処理性能,堅牢さ,拡張性。モバイルはこのバランスのどれに重点を置くかで決まるわけです。Libretto50にはじまって,EpsonDirect NT2600(モバイルじゃないし),モバギ+モバギスピンオフ多数,X40,X61タブレット,LOOX-UとかP(Pは間を置いて2回試しました),eeePC901,Dynabook SS,VAIO TypeZ,ポメラ(?)にいたるまでいろいろモバイル機は試しました。みなそれぞれにいいんです。

でもね,なんか言い訳して無理に自分を納得させてたんです。ずっと。手が小さい方だからB5サイズキーボードでも大丈夫,とか,軽量だからキーボードとかディスプレイのたわみが大きくても仕方がない,とか,小さいから処理性能はある程度ショボくてもしゃあない,とか。

MacBook Airはモバイルへのそういうわだかまりを払拭させてくれたわけです。「薄い」ことが強調されていたので強度に対する不安がありましたが,アルミの削り出しの強さはハンパないです。ディスプレイもキーボードも「たわみ」とは無縁です。他製品と比較して拡張性も加味すると1.3キロに問題ありという意見もあるようですが,この筐体の強度と13.3インチで1.3キロはむしろ軽い,とハッキリと言えます。バッテリはね,たしかに少し物足りないです。でも3,4時間不安なく使えます。丸一日本気で使うときはアダプタ持っていきますが,1ヶ月に1度あるかないかです。

筐体の美しさとか所有欲を満たすとかそういう言い方もあるかもしれませんが,実質的に使えるモバイル機なんです。MacBook Airは。見た目のインパクトが強すぎるので,審美的なレビューが多いのも仕方ないと思うのですが,1年半使ってみて思い起こすのは デザインと機能に関するジョブズの哲学です。大切なのは機能なんですよ。

たしかに出先でも何時間もプラグインしないで稼働させる必要があるようなビジネスシーンには向かないでしょうね。それと,アルミでたわまない=可塑的ということになるので,落とすとまずい,というのはあるわけです。(私の場合はずっとモバイル人生してますが,落としたことって一度もないです。この先落とさないともかぎりませんが。)だから落とすことを心配するひとには向かないでしょう。その意味では使う人を選ぶ機種なのかもしれません。私は別に「選ばれた」とは思ってませんが。ていうか選ばれてるのか。いずれにせよ強調したいのは「このOSにしてこの筐体の強度と質感と13.3インチで1.3キロ+実質4時間駆動」という点。

・・・うーん,

ブログタイトル,ザッキーのAppleブログにしたほうがいいかな。